C・F・ザトラー
J・C・ペンツェル

■C・F・ザトラー

クリスティアン・フリードリヒ・ザトラーは、1778年1月20日ライプ ツィヒの管楽器製作者カール・(アンドレアス)・ヴィルヘルム・ザトラーの息 子として生まれました。金管楽器の製作をカール・レオ・ザトラーより学び、 1799年から1805年までヨハン・ゴットフリート・モーリッツの下で修行しています。そして、1809年にライプツィヒにて工房を設立しました。

ザトラーは、1821年(特許の申請は1819年)にバルブを考案し、ザクセン地方において他に先駆けて金管楽器にいち早くバルブを組み入れました。 このバルブは、ザトラー・ヴェンティルとも呼ばれ、このバルブが1823年 ウィーンのヨーゼフ・リードルとヨーゼフ・カイルにより改良され、さらにそ の後レオポルド・ウールマンが改良を加えて、ウィンナバルブ(ダブルピスト ンバルブ)に発展しました。

また、ザトラーはトロンボーンにおいて画期的な開発を行い、トロンボーン 製作に革命をもたらしました。ザトラーの開発した楽器は、それまでの(バロッ ク時代から18世紀までの)テナー・トロンボーンのボア径が10mm前後で あったものを拡幅しワイド・ボアにしました。またベルは、それまでのものが あまり先端の開きがなくベル径15cm前後であったものを、幅広いクランツ を取り付け、ワイドなフレアーを持った20cm以上のものにしました。他に モダンタイプの楽器へ最初にデュアルボアを取り入れたのもザトラーであると言われています。

1839年ザトラーが下吹き用の太いボアを持ったトロンボーン(このタイ プの楽器が最初にテナーバス・トロンボーンと呼ばれていたとされる)に初め て4度下降バルブ(F管バルブ)を装着した楽器を考案しました。

このシステムの考案により、F管バストロンボーンのポストは、時代の流れとともに、この ワイドボアのF管バルブ付テナーバストロンボーンへと代わっていきます。

この他にザトラーは、主管とスライドのU字管部分に模様の入った棒状のものをつけ、これが後に彼の弟子ペンツェルの時代に、蛇飾りへと発展します。

また、スライドの根元へ最初にバネ・クッションを入れたのもザトラーであると言われています。

ザトラーは、当時多くの製作者に影響を与え、モダンのドイツトロンボーンの基礎を築いた金管楽器製作史上で注目すべきマイスターであります。

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