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私の愛器


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Helmut Finke
Bassposaune


Helmut Finke

楽器についての独り言
 私は滅多に、自分の好みだけで楽器の評価をしませんが、この楽器についてはベタ誉めします。日本でこのヘルムート・フィンケというメーカーは、ほとんど知られていませんが、 このメーカーの楽器は底知れぬ可能性に満ちています。この楽器は、注文によりヘルムート・フィンケ氏が一から設計製作してくれたフルニッケルシルバー製のバストロンボーンです。
 フィンケの楽器のレスポンスは、非常に独特です。客観的には、とても反応が速く・シャープでクオリティーが高いです。発音すると、剛速球の速さのように楽器が反応してくれます。 私は今まで数多くの名器と言われるトロンボーンを吹いてきましたが、未だかつてこのような優れたかつ豪快なレスポンスのフィーリングを味わったことがありません。
 フルニッケルシルバーだと、一般的には吹奏感が重めになる傾向ですが、この楽器は非常にライトで発音しやすく、操作性が良いです。また、管圧もコンマ35ミリと薄いですが、いくらでも息が入り反応してくれるので、ダイナミックレンジの限界が広いです。 ヘビーな楽器でもある程度フォルテシモの限界は(自分が出すことが出来なくても)見えるのですが、この楽器はまだ限界が見えない天井知らずという感じです。
 音色は、フルニッケルシルバーだと一般的には固めでダークというイメージがありますが、フィンケのニッケルシルバーはゴールドブラス的な暖かさのある音がします。さらに、音色の幅が普通の楽器よりあります。
 総合的には、非常にフォルテシモの限界が広いですが、ピアニシモにおいても唇のほんの少しの振動にも楽器が反応してくれて、響きを作ってくれます。さらに、上記の作用から音にニュアンスがつけやすいため、トーン・キャラクターのバリエーションが豊富に求めやすいです。私にとっては、申し分のない最高の楽器です。
 しかし、この楽器を音大生やいろいろな人に吹いてもらいましたが、「いいね!」と言ってくれた人はほとんどいませんでした。それほど個性的な楽器です。

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