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私の愛器


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Berndt C. Meyer
Bassposaune


Berndt C. Meyer

楽器についての独り言
 今日ではトロンボーンのインナースライドに硬質クロームメッキをかけることは当り前の事ですが、 他の金管楽器では全長に対してトロンボーンのスライドの長さ分に相当する内管表面にクロームメッキをかけているものはありません。 このクロームメッキを掛けるということは、音色や響きの観点からするとドイツトロンボーンにとっては、あまり大きな意味を持つものではないような気がします。機能・操作性の面からのニーズによるものだと思います。
 硬質クロームメッキを掛ける理由には、次の事があげられます。管圧を補い、マテリアルを保護し、硬度を高め、耐久性を上げます。 また、スライド内管と外管の摩擦抵抗を少なくすることもあげられます。
 この楽器は、第一にヘッケルの響きが再現でき、現代のニーズに対応できるような楽器にしたいと、ヘッケル/ヴィンディシュの正式な後継者となったマイヤー氏に製作を依頼しました。 インナースライドの管圧をヘッケルとほぼ同じにして、響きの観点から硬質クロームメッキはあえて掛けませんでした。
 マイヤー氏や楽器のセッティングをアドバイスして頂いた方は、「メッキを掛けると、響きが(主観的に)硬い傾向になり、ヘッケル独特の柔和で倍音豊かな響きを再現する妨げになる可能性がある。」とのこと。 また、メッキを掛けないことやスライド管圧を下げたことで、どんなに精巧なスライドを作ってもアウタースライドの重みでインナースライドがしなり、スライドアクションのスムーズさが若干欠けてしまうことがあります。 これについては、ルーズフィッティングを採用する事で、ほとんど解消されました。ルーズフィッティングとは、スライド外管の支柱を一部ハンダ止めしないものです。 考えてみれば、クルスペやレッチェ、ホルスト・フォークトなどドイツの名工達は、1960年ごろまではこのようなコンセプトでトロンボーンのスライドを作っていたのでした。 そして、現在の方がマテリアルの品質が良く、管の引き抜き技術なども進歩しているため、この楽器のスライドにおいて、実用・操作性に問題を感じたことはありません。

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