ドイツトロンボーン名工1
エピローグ

ドイツトロンボーンは、複雑に音響が反射する歌劇場、コンサートホール、お城、教会などでその響きが培われ、人はその響きを「いぶし銀の響き」あるいは倍音成分が共鳴し合う様を「天使の響き」などと形容しています。

50年以上経てきている名工の楽器が、今なおベルリン・フィル他ドイツをはじめとする様々な国のプレイヤーに愛用されたり、それらの名工の製作コンセプトが取り入れられた楽器製作が現在でも行われているのは、名工の楽器やそれらの伝統を受け継いでいるドイツトロンボーンが音楽芸術を作り出す優れた道具に他ならないからだと思います。

私は、ドイツトロンボーンに単なるノスタルジーや懐古趣味で注目しているわけではありません。

トロンボーンは、既に19世紀末までに完成している楽器で、20世紀前半において既に色々な改良がやり尽くされています。

今日に至るまでは、そのほとんどがテナーバスまたはバスなどバルブを組み込んだモデルにおけるバルブの改良と時代のニーズに合わせた仕様のアレンジで、根本的には大きな変化はありません。

ここで取り上げた製作者の楽器を見つめなおすことでドイツトロンボーンの原点、その発達と時代によってどのようにアレンジされてきたか、その足跡を知ることも重要であると思っています。

特に、クルスペヘッケルなど名工とされる楽器については、そのコンセプトが恒久的に優れた楽器であると思い、取り上げました。

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